2020/10/30

薬剤師転職で高収入・キャリアアップを目指したい!業界事情や仕事の種類と成功のポイント

薬剤師は診療報酬改定や大手チェーンの業界再編などさまざまな動向があり、転職の際は正確な情報収集と自己分析が役立ちます。近年は薬剤師としての専門性や対人スキル、経営能力などが転職において評価されることも多くなっており、転職ではスキルの洗い出しも大切です。本記事では薬剤師の転職事情を解説し、年齢ごとの強み・弱み、仕事の種類や転職で成功するためのポイントを紹介します。

薬剤師転職で知っておくべき業界事情

薬剤師は、医療ニーズや診療報酬制度など、社会的な動きに大きく影響を受ける業界です。薬剤師として転職する際は、まずは現在の業界事情を知っておくと失敗を防ぎやすくなります。

売り手市場が継続

薬剤師業界では、薬剤師の売り手市場が継続しています。

2003年頃の規制緩和によって薬科大学や薬学部が増加したものの、2006年に6年制が導入されて履修が難化。薬剤師の国家試験の合格率が低下したことにより、2000年から2018年まで薬剤師の届出総数の推移を見ると、年にして1万人を超えない増加ペースにとどまっています。

また、この間に薬局業務や、医療施設の調剤・病棟や検査といった業務に従事する薬剤師は微増を続けており、薬剤師数の緩やかな増加分を吸収している状況です。

現在、大学や行政側において、薬剤師の輩出数を大きく増やすために目立った対策がとられているわけではありません。一方で、高齢化を背景に医療ニーズは増えつつあり、薬剤師の売り手市場は今後も継続することが見込まれる状況です。

診療報酬・薬価改定などで業界への影響も

薬剤師の仕事という点では売り手市場が続いている一方、調剤報酬や薬価を巡っては懸念材料もあります。

近年の診療報酬改定では、薬価や材料価格を引き下げる動きがあり、技術料や薬剤料を含む「調剤報酬」を抑えようとする傾向が続いてきました。

実際、概算医療費のデータを見ると、2010年に6兆円だった調剤医療費は2015年に7.8兆円まで増加したものの、その後は横ばい傾向で2018年は7.4兆円に抑えられています。

調剤報酬は薬剤師の報酬の元となるものです。これを抑制する動きが続いていることで、特に調剤薬局や製薬会社などはビジネスモデルの改革を迫られています。

ネット販売解禁などの動向

診療報酬改定などの他にも、薬剤師業界にはさまざまな動向が生じています。

例えば、薬のインターネット販売解禁です。従来、医薬品は薬剤師が対面で販売しなければなりませんでしたが、法改正で2014年6月からは一般用医薬品については適切なルールのもとであればネット販売が可能になりました。

他にも、診療報酬改定と関連して、患者がかかりつけ薬局を利用することを推奨する動きや、薬剤師業務を対物から対人へと移行させる動きなど、薬剤師を取り巻く環境は大きな転換点を迎えています。

薬剤師として転職する際は、こういった動きを捉えられるかどうかが成功の可否を握る可能性があるのです。

薬剤師の転職年齢のパターンとそれぞれのメリット・デメリット

薬剤師として転職する場合、その年齢ごとに強みや弱みがあります。ここでは若手、中堅、ベテランという3つのパターンについて、それぞれのタイミングで転職するメリットとデメリットを紹介します。

若手(20代~30代前半)

20代から30代前半であれば、いわゆる第二新卒としての採用ニーズもある他、長期的なキャリア形成も十分可能な年齢であるため、比較的転職の選択肢は広いといえます。

ただし、あまりにも前職の勤務期間が短いと、採用担当者が「職場への耐性が無い人材かもしれない」と不安を感じるケースもあるため、その場合はなぜ転職するのかをしっかり説明できるようにしておくことが大切です。

中堅(30代半ば~40代半ば)

30代や40代は、その職場での薬剤師業務は一通り経験しているため、即戦力人材として期待がかかる年齢です。これまでの経験やスキルを武器に、将来の幹部候補や役職を担当する人材としてアピールすることもできます。

中堅の薬剤師として転職する際の注意点は、異分野のハードルの高さです。薬剤師にも調剤業務や検査業務、MRなどさまざまな種類があり、未経験の分野に突然キャリアチェンジするのは負担が大きい可能性があります。

ベテラン(40代後半~)

40代や50代で転職する際は、薬剤師としての専門スキルや、マネジメント経験などをアピールすることで、経営幹部や管理職のポストに就ける可能性があります。薬局やドラッグストアなどにおける店舗責任者の経験や、製薬会社などでの管理職経験などがあると有利です。

薬剤師の求人には長期的なキャリア形成のために年齢制限を設けていることがあり、50代ではミスマッチになる可能性があります。しかし、専門性や経営スキルのあるベテラン人材を求めるハイクラス求人もあり、そういった分野では優秀な人材へのニーズが根強くあるのも事実です。

転職前に確認!薬剤師の仕事の種類と職場ごとの特徴

薬剤師の職場には、調剤薬局やドラッグストア、医療機関、製薬会社などがあり、仕事内容は大きく異なります。転職で後悔しないためには、あらかじめそれぞれのメリットとデメリットを知ることが大切です。ここでは薬剤師の仕事の種類と、その特徴を紹介します。

調剤薬局

調剤薬局は薬剤師の約6割が働く場所です。調剤薬局には大きく分けて門前型と面分業があり、雰囲気や働き方は異なります。

調剤薬局では、受付や処方せんの内容鑑査、薬歴簿の照合、薬の調剤や鑑査、服薬指導や会計などが主な業務です。近年の傾向として、鑑査システムなどによる機械化によって、窓口業務の比重を増やしやすくなっています。

調剤薬局の薬剤師は、地方都市の方が年収が高い点が特徴です。「賃金構造基本統計調査」(2019年)によると、薬剤師の月当たり支給額と賞与をもとに都道府県ごとの平均年収を計算すると、静岡県(699万円)、長野県(690万円)、宮崎県(570万円)が高く、東京都(554万円)、大阪府(559万円)といった都市部を超えています。さらに、これら三県は全国平均(562万円)を上回っていました。調剤薬局は薬剤師の他の仕事に比べて給料が低い傾向がありますが、地方であれば高収入を狙いやすくなります。

ドラッグストア

ドラッグストアは、自ら健康管理する「セルフメディケーション」や予防医療の点から注目されており、医薬品の販売担当者として薬剤師へのニーズが高まっています。

ドラッグストアにはOTC型と調剤併設型に分かれ、OTC型では一般用医薬品の販売がメインとなるため、必然的に接客や店舗管理のスキルが身につく点が特徴です。一方、調剤併設型は調剤業務も行うため、薬剤師として活躍する機会が増えます。

ドラッグストアは調剤薬局よりも営業時間が長いことが普通です。そのため、労働時間が長くなり残業代も増える傾向があります。また、店舗業務に加えて資格手当が支給されるため、調剤薬局よりも給料は高いことが一般的です。

医療機関(病院・診療所)

薬剤師全体の約2割が病院や診療所といった医療機関で働いています。

院内薬剤師は、調剤業務に加えて病棟での服薬指導など、通常の調剤薬局では経験しないような業務も生じる仕事です。また、治験や救急救命など、医療機関特有の業務が発生します。

調剤薬局やドラッグストアとの違いは、医師や看護師、その他医療スタッフらと連携しながらチームとして医療を提供する点です。そのため、院内薬剤師には薬の専門家としての役割やコミュニケーション能力が求められます。

病院や診療所の薬剤師は、ドラッグストアなどと比べて給料が低い傾向がありますが、基本的にスタッフの勤務時間が定められており、働きやすい環境であることが多いという特徴を持ちます。

製薬会社(MR・研究開発)

製薬会社で働く薬剤師は、大きくMR職と研究開発職に分かれます。

MR(医薬情報担当者)は、製薬会社の社員として医師や薬剤師に対して医薬品の情報を提供することが仕事です。MRは医療用医薬品を扱いますが、薬の情報量は膨大で日々新たな情報が更新されます。それを的確に医療関係者に届け、自社製品の売上に貢献することが役割です。

研究開発職とは、新薬開発や新薬の臨床試験などを行います。高度な専門知識が必要で、修士号や博士号が要件とされていることが一般的です。

製薬会社での仕事は高収入の傾向があります

その他

CRO(受託臨床試験実施機関)やSMO(試験実施機構管理機関)は、どちらも医療用医薬品の開発を目指して、治験やそれに関する事務手続き、医師の業務支援などを行っている機関です。新薬開発を巡っては製薬会社から治験の依頼が殺到しているのに対して担い手が不足しており、担当できる薬剤師が求められています。

その他、薬剤師として選べるのが公務員というキャリアです。国家公務員の場合は総合職として薬事、研究開発、医療・経済などさまざまな分野を担当し、地方公務員の場合は行政業務の他、公立病院や保健所で薬剤師として勤務

薬剤師でキャリアアップするために必要なスキル

薬剤師の方がキャリアアップするためには、市場価値を高めるスキルを知った上でキャリアにおいてそのスキルを磨き、転職の際にアピールすることが大切です。ここでは薬剤師に求められる3つのスキルを紹介します。

専門スキル

薬剤師としての高度な専門スキルがあると転職では有利です。

例えば、2016年の診療報酬改定ではかかりつけ薬局・薬剤師の算定要件として研修認定薬剤師が評価されることになりました。また、近年は特定分野の専門性を高めようとする病院も増え、「がん」や「精神科」「HIV感染症」といった専門薬剤師資格にも注目が集まっています。

こういった専門人材へのニーズは高く、専門資格があれば薬剤師としての活躍の幅が広がる可能性があるのです。

対人スキル

対人スキルも注目されています。

近年、行政は対人業務を重視する姿勢を打ち出しており、2020年の診療報酬改定でも「対物業務から対人業務への構造的な転換」という指針が示されました。具体的には、治療計画書を踏まえた服薬指導や丁寧な服薬説明、調剤後の状況確認といった点を評価するとしており、薬局師業界では対人業務を重視する流れにシフトしつつあります。

調剤に関わる薬剤師は、ただ調剤業務をこなすだけでなく、むしろ丁寧なコミュニケーションスキルが必要とされているのです。

経営スキル

経営スキルもあると転職ではアピール材料になります。

調剤薬局やドラッグストアで働く場合、薬剤師として販売や調剤をこなすだけでなく、その店舗の運営責任者として財務、スタッフ、店舗オペレーションなどを管理することも重要な職責です。

また、近年は調剤薬局やドラッグストアのM&Aが盛んで、薬剤師も会社の一員として対応力が求められます。

こういった背景からも、経営スキルがあるとキャリアアップにつながるのです。

薬剤師転職で成功する3つのポイント

薬剤師は業界の変化が激しく選択肢も多いため、転職で失敗しないためには情報収集と自己分析が欠かせません。ここでは薬剤師の転職で成功するためのポイントを紹介します。

自分の優先順位を整理する

薬剤師転職では、優先順位を整理することが大切です。

先述の通り、薬剤師として調剤に携わるにしても、調剤薬局やドラッグストア、病院・診療所などさまざまな選択肢があり、それぞれ待遇や働き方は異なります。例えば、調剤薬局は診療報酬改定の中で対人への業務改革の最中にあり、ドラッグストアでは業界再編の中で経営寄りの仕事が可能です。

薬剤師業界の大きな変化で働き方も価値観も多様化する中、報酬やキャリア向上、やりがい、安定性など、自分にとって何が大切なのかを洗い出しておくことは転職を成功させるための土台になります。

最適な時期を選ぶ

薬剤師転職では、時期を選ぶことも重要です。

薬剤師が転職する際は、一般的に冬が良いとされています。これは、インフルエンザなどの感染症は冬に流行することが多く、それに伴って薬剤師ニーズが高まり魅力的な求人も出やすいためです。

近年は新型コロナウイルスによってややイレギュラーな動きもありますが、基本的に繁忙期の方が良い求人案件を見つけやすくなります。

転職エージェントに相談する

転職エージェントに相談することも効果的です。

薬剤師は多様なキャリアの選択肢があり、また働き方も豊富なため、その中から自分に合う求人を自力で見つけることは簡単ではありません。また、店舗のマネジメント経験が大手調剤薬局チェーンで重宝されるように、自分の経験やスキルが実は思いもよらない場所でこそ生きるというケースもあります。しかし、自分でそのように客観視することは意外に難しいものです。

転職エージェントに相談すれば、これまでの薬剤師としてのキャリアやスキルと、今後の希望などのカウンセリングを受けた上で、非公開案件も含む案件の中から最適な提案を受けられます。条件交渉なども依頼できるので、結果的に満足できる結果になる可能性が高いのです。

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薬剤師の仕事内容

薬剤師は、調剤薬局やドラッグストア、病院、製薬会社、公務員などさまざまな働き方があり、業務内容も調剤や販売、服薬指導、治験、研究開発、製薬営業、行政など豊富です。

働き方によって担当業務は大きく異なりますが、薬剤師全体の多くが行う調剤業務については、診療報酬改定などもあり対物から対人シフトが進んでいます。

薬剤師の仕事のやりがい

薬剤師は、薬のプロとして患者の健康維持や治療に関わります。人の健康に関することなので責任は重く、ミスには非常に神経質になりますが、自分が提供した薬によって患者の病気が回復したり、それによって感謝されたりすることが魅力です。
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