2022/10/20
目先の年収にとらわれない。役職定年前の転職を後押ししたエージェントの一言
シニアのキャリアプランをきっかけに転職を決意
移籍前は、大手理化学機器メーカーで技術部長として横浜で働いていました。
元々の赴任先は関西地方で、そこで一生の伴侶も得ましたが、私が40代後半の頃、母のがんが発覚しました。
父はその数年前に他界しており、頼れる親族も周囲にいません。会社と相談した結果、特例として母の住まいに近い横浜に転勤できることになり、しばらくは介護と仕事を両立する日々でした。
そして母の見送りを全て終え、その後の自身の人生について考えるようになりました。気づけば自分も50代になり、これからどんなふうに働き、どこで暮らすのがいいのだろうかと。
関東近郊に私の身寄りはおりません。対して、妻の両親は仙台に住んでいます。母の介護の経験から、近隣に住まう心強さは身に染みていましたから、どこかで妻の実家がある仙台に戻る必要があると感じていました。
ただ、当時勤めていた会社には仙台の拠点はなく、東北へ転勤の可能性はありませんでした。くわえて、役職定年の60歳が迫っていました。役職定年後の給与や職務について、人事からは60歳以降は職務内容が変わり若手のサポート業務の比重が増える上、基本的には年収が下がるという説明を受けました。
50代後半から60代のキャリアプランを考えたとき、年収もそうですが、年齢だけを理由に前線から退かなければいけなくなるのも、自分にとって納得できないことでしたね。
まだまだ挑戦を続け、第一線で働きたい。できれば年収水準を維持し、さらには仙台で働けること……こうした希望を叶えるためには、定年まで待っていては手遅れです。動くなら少しでも早くと、さまざまな転職サイトに登録しました。しかし、なかなか条件に合致する求人案件には巡り合えず、50代での転職の厳しさに直面しました。
転職活動で出会った中小企業という選択肢
思うように転職活動が進まないタイミングで、担当エージェントから外資系のとあるメーカーをご紹介いただきました。
国内での規模はそれほど大きくはありませんが、工業部品メーカーとしてグローバルに展開しており、国内メーカーとのつながりも強いという話を聞いて、しっかりした基盤のある企業という印象を受けました。
実のところ、大手メーカーを渡り歩いた経験から、つい国内での成長度合いや規模で見てしまうクセがついてしまっていたんです。そのため、仮に転職サイトでこの案件を見つけていたら、目にも留まらなかったかもしれません。
担当エージェントから詳しい話を聞くうちに、規模の大小に関わらず、技術力でシェアを伸ばす事業内容にわくわくしたのを覚えています。
なにより魅力に感じたのが、年齢にとらわれない裁量の与え方です。多くの日系企業とは異なり、社員の経験やスキル、要望に合わせて仕事を任せてもらえる社風に、ここでなら新しいチャレンジができるのではと思いました。
60歳以降も、実力と評価次第で年収が保たれるという企業の方針も伺い、新鮮に感じました。
ただ、悩ましい点がなかったわけではありません。
まず、年収が現在より25%ほど下がってしまうこと。そして求人をご紹介いただいたタイミングでは、当初の希望であった「仙台勤務」は保証されていなかったのです。
「生涯獲得報酬」という考えが背中を押した
年収を下げず、仙台に移り住める仕事をあきらめずに探すべきか、このオファーを受けるべきか……。非常に迷いましたが、将来の可能性も踏まえ、後者を選択しました。
会社の社風や基盤はもちろん、これまでの職務内容とは異なる領域を任されるポジションに、挑戦したいと意欲が湧いてきたのです。ここで決めなければ、こんなに自分にとって良い条件の求人には巡り合えない、と思えたのも決め手になりました。
とはいえ、年収が今よりも下がるということは、元々年収は下げない前提で転職活動をしていたので、大変ネックでした。そのことを担当エージェントにお話したら、こんな言葉をいただいたのです。
「目の前の年収ではなく“生涯獲得報酬”で考えてみませんか?」
続けて話を伺うと目下の年収ではなく、生涯獲得できる年収で計算すればむしろ前職よりも上がっていませんか、ということだったのです。この考えにはハッとさせられましたね。
恐らく前職に留まっていれば、役職定年・定年を経て年収がほぼ半分になっていたはずです。今の会社は、60歳を超えても年収が大きく下がることはなく、結果として前職よりも多い生涯獲得報酬を60代で得られると分かったのです。
当初の希望条件であった勤務地や年収にこだわり続けていたら、ここまでの好条件の求人案件とは巡り合えなかったと、振り返って思います。
しばらくは横浜勤務ですが、いずれ仙台勤務になる可能性も残されています。年収については2〜3年の短期目線ではなく、50代、60代と長期目線で考える大切さを実感しました。
優先順位を突き詰めることが満足のいく結果に
転職活動では、担当エージェントの方に非常にお世話になりました。
もともと、転職サイトで希望とマッチする求人を見つけるのは難しいとわかっていましたから、正直なところエージェントへの期待値は低かったのです。
ところが、担当いただいたエージェントは製造業に精通されていらっしゃって、近年のメーカーのトレンドもよくご存じでした。
なによりご紹介頂いた会社は、製造する部品が大変ニッチなものです。それにも関わらず、事業内容などよく理解されており、話しているうちに、この方にならいろいろご相談できると、心強く思ったのを覚えています。
こちらの迷いも敏感にキャッチしてくださり、決断を急かすようなやり取りがないのも安心できましたね。
今回の転職では、自分が本当に大事にしたいことを突き詰める必要性を実感しました。はじめの頃は年収と勤務地、どちらが大事なのかわかっていませんでしたし、両方を叶えなければならないと思っていました。
口では「仙台に住みたい」と言い、転職で年収が下がることにも妥協できない。優先順位を、自分のなかで決め切れていなかったのです。
本当に勤務地が大事であれば、早期退職して移り住んだあと、仕事を探すことも不可能ではないですからね。それができなかったということは、やはり求人内容に合わせて転職の軸がぶれていたのでしょう。
いろいろと迷うなかで、これまでのキャリアを活かすことや、長期的に満足のいく年収が保証されることが、自分にとって大事なのだと徐々に明確になっていきました。
結果として、勤務地の条件を一旦脇に置いたおかげで視野が広がりました。大企業だけでなく、中小企業にも、素晴らしい技術力を持ち、魅力的な社風の会社があると知ることができたのです。
きっと、仙台で勤務することにこだわり続けたり、一人で悩んだりしているだけでは、転職はできていなかったでしょう。納得して選んだ転職先に、満足しています。
新天地で日本のものづくりを支えたい
現在は、商品を国内に展開するにあたり、日本仕様にローカライズするマーケティングや商品開発を任されています。工場のデジタル化を検討するお客さまも増えており、MtoMネットワークのご提案に携わることもあります。
いずれにしても、これまでの経験が活かせる領域で、かつより幅広い裁量で仕事に取り組めており、やりがいを感じています。
今後は、既存のお客さまへ、これまでの知見を活かし工場のIoT推進に向けた提案に力をいれていきます。その中で、顧客ニーズを見落とさず、商品開発に活かし、自社製品のシェアを拡大する取り組みに貢献できればと考えています。
日本国内には、企業規模に関わらず、世界に誇る技術力を持った会社がたくさんあります。高い技術力を誇りに、胸を張れる仕事をしていきたいですね。
いくつになっても挑戦です。転職を決意したおかげで、新しい夢ができたような気持ちです。
中小企業メーカーの生産性改善に関わりながら、日本のものづくりのレベルを、微力ながら支えていきたいと思います。
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