2022/03/18
転職にあたり現職・転職先で発生するトラブルとは……対処法や注意点も解説!
ハイクラス層がスカウトサービスを利用して移籍・転職する際、さまざまなトラブルが発生するおそれがあります。しかし、あらかじめトラブルを想定して対策しておけば予防・回避が可能です。転職する際は主に、「現職の会社との間で起きるトラブル」「転職先の会社との間に起きるトラブル」の2種類が想定できます。以下で、ハイクラス層の転職にあたって発生しうるトラブルを「現職」「転職先」「それ以外」の3つに分け、それぞれについて解説します。
【現職編】転職時に起こりうるトラブル
退職の際、現職企業とは退職交渉でトラブルが発生しがちです。例えば、なかなか退職を認めてもらえなかったり、退職日の延期を持ちかけられたりします。また、退職条件の交渉が難航することも少なくありません。
退職を了承してもらえない
管理職など重要なポジションにあるミドル人材の場合は特に、転職に際して後任の人材を用意することが容易ではありません。そのため、直属の上司などに退職の意思を伝えても、引き留められる可能性が高いと考えられます。
大手人材紹介の調査によると、転職コンサルタントの4割以上が、「ミドルの転職では現職から引き留められるケースが多い」と回答しています。また、退職時のトラブル第1位は「現職企業からの強引な引き留め」です。
場合によっては、直属の上司や社長がどうしても退職願を受理してくれないケースもあります。職業選択の自由は憲法でも保障されており、退職の申入れを不当に拒否することはできません。それを念頭に強い意志を持って退職交渉に臨む必要がありますが、いざとなれば所轄の労働基準監督署や弁護士に相談する必要があります。
退職日を引き延ばされる
退職の申入れ自体は認めてもらえても、退職日を希望の日よりも後にするように現職の会社から言われることもあります。転職先への入社日が既に決まっている場合、現職で引き留められて退職交渉が長引いて入社日が遅れるなど、転職先へも迷惑をかける事態になるかもしれません。一度決定した入社日を延期すれば転職先の上司や同僚からの信頼を失うおそれが出てきます。最悪の場合、転職の話そのものが消えてしまうケースさえあるのです。
退職日の延期を要求された場合、業務の引き継ぎ計画や後任の採用計画などを上司に伝えて安心させ、希望通りの退職日を認めてもらえるように交渉しましょう。どうしても予定通りに退職できない展開になった場合、転職エージェントに相談してみてください。
退職条件の交渉が難航する
退職条件とは有給休暇の取得可否や買い取りの有無、退職一時金など、福利厚生に関する条件です。
有給休暇は労働者が理由を問わず自由に使えることが保障された権利です。退職に際して未消化の有給休暇がある場合、その取得可否や買い取りの有無について交渉しなければなりません。有給休暇の買い取りとは、未消化の有給休暇を賃金に換算して支給してもらうことです。
また、退職一時金が出るかどうかも交渉が難航しやすいポイントといえます。就業規則に退職一時金が規定されているにもかかわらず、自己都合による退職の場合は支給を渋られてしまうことがあるのです。
退職後の業務活動に制限を受ける
退職する際、競業避止義務の遵守を迫られたり、転職後の業務活動に制限を受けたりする場合があります。例えば、「競合への転職はしない」「現職で知り得た情報を今後一切利用しない」といった内容の誓約書を書かされるなどです。
競業避止契約が有効であるかどうかの定義は一律ではなくケースバイケースのため、必ずしも会社の主張が正しいと認められるわけではありません。競業避止契約の有効性を裏付けるものとして、転職を禁止する業務の範囲や拘束年数、対象の役職、給与の増額といった代償措置の有無などがあります。
競業避止義務の遵守を求められたり、自分に不利な誓約書へのサインを求められたりした場合はその場で判断せず、「考えさせてください」などと伝えて保留にしましょう。その後、弁護士や転職エージェントなどに相談してください。
【転職先編】転職時に起こりうるトラブル
転職先では「条件が異なる」「職務内容が異なる」「職場風土・内情への認識が異なる」といったトラブルが発生する場合があります。以下でそれぞれのトラブルについて解説します。
労働条件が約束と異なる
好条件を提示されて転職を決意するケースは多いことでしょう。しかし、いざ転職してみると、事前に約束していた給与や待遇などと異なるケースは少なくありません。このような場合、口頭で約束されただけでは根拠を示して交渉することは困難です。転職活動中に条件通知書を書面でもらっておけば、このようなトラブルが発生した時に役立ちます。
職務内容が約束と異なる
実際に転職してみたところ、事前に約束されていた役職やポジション、任されるミッションといった職務内容が異なっていたというケースもあります。この場合も、事前に条件通知書を書面でもらっておけば交渉が可能です。また、職務内容についての認識のズレが自分と転職先企業の間で生じることもあるため、具体的な職務内容については面接時などにしっかりと確認しておきましょう。
企業風土・社内の状況が企業の事前説明と異なる
事前に聞いていた職場の雰囲気と実際が異なっており、転職後の組織に馴染めないというケースもあります。あるいは、「想定した以上に組織の管理者・責任者としての労力や労働時間がある」「そのなかで成果を要求される」といった場合もあるでしょう。そうすると、当初に約束していた報酬では割に合わないという不満の原因になります。また、業績は好調で拡大中と聞いていたにもかかわらず、実際は厳しい状況にあることが転職後にわかるケースもあるでしょう。
職場風土や内情については明確に文書化することが難しいため、面接時などに具体的な内容について質問するなどして、転職先との認識のズレが生じないようにすることが大切です。
【その他】転職時に起こりうるトラブル
現職や転職先企業との間に起こるトラブルに加えて、家族や友人・知人との関係によるトラブルや現職の業務に関するトラブルも起こり得ます。それぞれのトラブルについて以下で解説します。
家族
転職を家族から反対される場合があります。転職によって勤務時間帯や残業時間、リモートワークや転勤の有無といった勤務形態に変化が生じることに家族から不満や不安が出るケースです。特に、安定した大企業から規模の小さい企業に転職する場合は家族の不安が大きく、現職に留まるように迫られることもあります。
友人・知人
友人・知人との関係が転職先の居心地に影響する場合があります。特に、知人に誘われたことがきっかけで転職した場合、その知人が自分の転職後に辞めてしまうと、転職先に居がないと感じるかもしれません。あるいは、知人に誘われて入社後に「この会社は自分に合わない」と感じても、誘ってもらった手前、そうは打ち明けられずストレスがたまる原因になることもあります。
業務
現職への退職交渉が順調だとしても、業務が原因で起きるトラブルもあります。特に、難しいプロジェクトを任されている場合などは後任者の選定が難航したり、関係各所との調整作業が膨大になったりするでしょう。それによって引き継ぎがスムーズに進まないまま退職日を迎えてしまうこともあり得ます。
転職時の4つのトラブル事例
転職する際は現職の社内で転職先がどこかを誰にも言うべきではありません。ここでは、現職の人に転職先を漏らしたことで起きたトラブルを4件紹介します。
トラブル事例1.企業間の摩擦による失職
退職交渉時に移籍先の社名を社長に告げた。転職先が競合会社だったため、「うちの社員を引き抜くのか」と社長が激怒。転職先へ抗議に行き、そこから会社同士の大きなトラブルに発展した。それが原因となって転職の話そのものが立ち消えになり、職を失ってしまった。
トラブル事例2.転職先へのクレーム
転職先が現職の取引先だったので、「いずれはわかることだから」と転職前に移籍先の社名を社内で告白。すると現職の社長が「うちの社員を引き抜くなら取引を停止する」と転職先に圧力を掛けた。転職先が現職との取引停止よりも自身の採用を重視したため、職を失うことにはならなかったが、会社同士の関係が破綻。入社後の評価や居心地に悪影響を与えることになった。
トラブル事例3.退職交渉のやり直し
退職交渉では上司や社長に転職先を伝えなかったが、送別会で部下に転職先を明かした。すると、「人の口に戸は立てられぬ」もので、その情報が社内でまたたく間に拡散。社長の耳にも入ることになり、「その会社に転職することは認めない」と、退職交渉が振り出しに戻ってしまった。
トラブル事例4.待遇交渉の不履行
退職交渉のなかで、社長から給与アップを条件に慰留された。その話に乗って退職を思いとどまったところ、約束通り給与は増加。しかし、半年後には減給され、元の金額に戻ってしまった。「話が違う」と社長に申し立てたが、取り合ってもらえなかった。
転職にまつわるトラブルへの対処法
転職にまつわるトラブルを未然に防ぐには以下の4点を意識してください。
- 誠実な対応を貫く
- 書面などで記録を残す
- すぐ判断できないことは保留にする
- プロの意見も参考にする
それぞれについて以下で解説します。
誠実な対応を貫く
転職先が決まっていたとしても、これまで自分を育ててくれた現職への感謝を忘れず、退職日まで一貫して誠実な対応をするようにしましょう。具体的には、退職交渉においてむやみに現職を批判することは避け、できるだけ迷惑をかけないような引き継ぎ計画を提示することです。最後までできるだけのことをするという姿勢を示すことによって、上司にも退職を納得してもらえるでしょう。
書面などで記録を残す
退職交渉や転職時の条件などについては、口頭での約束で済ませず、書面で記録を残すことが大切です。特に、転職先からの内定については口約束でなく、必ず書面でもらっておきましょう。また、退職交渉における「退職願」「退職届」を書面で提出することも、退職交渉の証拠を残すために重要です。
【参考記事】退職願・退職届の書き方・記載例・8つのポイントと提出時期やよくある疑問すぐ判断できないことは保留にする
上述のように、退職交渉において競業避止義務の遵守を迫られたり、「競合への転職は認めない」「現職で知り得た情報を一切利用しない」といった内容の誓約書を書くように求められたりすることがあります。こういった場合はその場で答える必要はありません。堂々と保留にして、法律を調べたり弁護士に相談したり、転職エージェントに確認したりしましょう。
プロの意見も参考にする
転職エージェントを経由する転職をする場合、困った時は担当エージェントに相談してプロの意見を参考にしましょう。転職エージェントは退職・転職に関する経験を豊富に持っており、適切な判断をしてくれます。
転職時にトラブルを避けるために注意すべきポイント
転職時によくあるトラブルを避けるために注意すべきポイントは、主に以下の5つです。
- 1.熟考のうえで転職を決める
- 2.転職意思を明確に示す
- 3.現職への批判は控える
- 4.転職先・移籍先情報は伏せる
- 5.転職時期には余裕を持たせる
それぞれについて、以下で解説します。
1.熟考のうえで転職を決める
まず、本当に転職したいかどうかをよく考えましょう。一度、現職に転職を表明してしまえば、引き返すことは非常に困難です。特に、転職先の内定後に入社を辞退すれば先方に大きな迷惑がかかります。また、もしも現職に引き留められて退職を思いとどまるとしても、一度「辞めたい」と表明した人間は現職へのロイヤリティが低いとみなされます。そのため、これまでと全く同じ待遇、人間関係、職務は期待できません。
【参考記事】退職交渉の切り出し方・手順と時期・期間の目安は?成功のコツと注意点2.転職意思を明確に示す
退職交渉を行う際は、「いついつまでに退職させていただきたいのですが」など、退職の意思をしっかりと伝えることが重要です。「退職したいと思っているのですが」といった言い方をすると、まだ退職意思が固まっておらず相談を持ちかけられたのかと、上司に誤解を与えかねません。曖昧な態度で退職交渉に臨むと現職からの引き留めに合う可能性があります。
3.現職への批判は控える
たとえ退職・転職したい理由が現職への不満であったとしても、それを退職交渉の場で言うべきではありません。現職への批判をすればそれを聞いた上司の感情を害し、その後の退職交渉がうまくいきにくくなる可能性があります。
4.転職先・移籍先情報は伏せる
上でも述べましたが、退職前に現職の関係者に転職先・移籍先の社名などを漏らすと、スムーズな退職が妨げられるおそれがあります。いずれ知られることではあっても、無事に退職するまでは転職先の情報は一切、漏らさないようにしましょう。
5.転職時期には余裕を持たせる
退職交渉に問題がなくても、業務上の理由で退職日が延期になる事態も想定できます。また、希望する退職日が認められず、退職が遅れるケースもあるでしょう。転職先に迷惑をかけずに済むよう、転職時期には余裕を持たせておくことも大切です。
【参考記事】退職の流れ・スケジュールや必要な手続き・書類や円満退職の心構え
【参考記事】転職活動の流れを徹底解説!準備が必要な書類・手続きと注意点
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